随分前のことになりますが、ヨーロッパのカフェで行われている「前払いカフェ」のことを紹介したことがありました。
このカフェは、次のお客様のコーヒー代金を前払いするというものです。
すると、次にお客様はコーヒーを無料で飲むことができるということです。
もちろん、お金を所持している人はちゃんとお金を払ってコーヒーを飲みます。
これにより、お金を所持していない人であっても、温かいコーヒーを飲むことができるのです。
心温まる素晴らしい仕組みです。
せめて、食関係でこのような仕組みが定着すれば、お金がなくても、何とか食事にありつくことができるかもしれません…。
アメリカでは、「カルマキッチン」と呼ばれるボランティアが運営する食堂があります。
仕組みは、定休日のレストランを借りて、ボランティアの人々が働きます。
そして、来店した人に食事を提供するという、いたってシンプルな仕組みです。
ここで注目すべきは、食事の料金の支払い方法です。
カルマキッチンに来店すると、「今日のお食事は、以前カルマキッチンに来た方からのギフトです」と言われます。
先程の前払いカフェ同様、飲食代金は以前のお客様によって清算済みなのです。
ただし、カルマキッチンで食事をすると、次のお客様の代金の支払いをするか、別のかたちで善意をしなくてはいけません。
お客様に歌を披露したり、家に帰ってから奥様に花を贈った人もいたそうです…。
このように、利用する人の善意によって成り立っている仕組みでは、無銭飲食の人が増えるのではないかという心配があります。
カルマキッチンは、持続することが目的ではなく、実験でやっているので、そんなことはまったく心配していません。
ここでひとつの疑問が起こります。
自分の食事代金を払うことも、次の人の食事代金を払うのも、とどのつまり同じだということです。
確かにその通りです。
大阪の路上で5円玉を5円で売っているおじいちゃんがいるそうです。
一見、まったく意味がありません。
5円玉を5円で売ったところで、儲けは1円もありません…。
この取引に価値を見出すことはできますか?
実は、売買を行う際、必ずそこに会話やコミュニケーションが生まれます。
そのコミュニケーションにこそ価値があるという考え方です。
お金という儲けは生まれませんが、そこになんとなく優しい気持ちになれる気持ちという儲けが生まれるのです。
また、知らない人と縁ができたという儲けかもしれません。
今から20年程前、「ペイ・フォワード 可能の王国」という映画が公開されました。
この映画は、ラスベガスに住むアルコール依存症の母と、家を出て行った家庭内暴力を振るう父との間に生まれた、少年トレバーが主人公です。
中学1年になったばかりの彼は、社会科の最初の授業で、担当のシモネット先生と出会います。
先生は「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら、何をする?」という課題を生徒たちに与えました。
生徒達のほとんどは、いかにも子供らしいアイデアしか提案できなかったが、トレバーは違いました。
彼の提案した考えは、「ペイ・フォワード」です。
自分が受けた善意や思いやりを、その相手に返すのではなく、別の3人に渡すというものです。これがペイ・フォワードです。
映画のストーリーは、これ以上紹介しませんが、他人のために善意や思いやりを渡していくことで、1人が3人に、その3人が9人に、その9人が27人に、その27人が81人に、その81人が243人に、その243人が729人に、その729人が2187人、その2187人が6261人に、その6261人が19,683人に…、あっという間に10億人を越えてしまいます。
この話、あなたはどう思いますか?
世界を変えることはできるでしょうか?
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