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執筆者の写真社長の大学★長谷川博之

商品は同じでも売り方を変えれば売れるという事実


どんなに素晴らしい商品を開発しても、売れなくては元も子もない。

そう考えると、商品以上に重要なのが「売り方」だ。売り方如何によって、販売数は大きく変わる。そこで今日は、売り方についてわかりやすく解説する。



1971年、日本の食生活に大きな革命が起こった。

日清が発売した「カップーヌードル」だ。当時の日清の社長でチキンラーメンの開発者である安藤百福が、紙コップで手軽に食べられるラーメンをと発案して作られた商談だ。発売当時はすでにインスタントラーメンは現代と同様に、3分程度加温し粉末スープを加える形が主流だった。



チキンラーメンは関東地方では市場には流通していなかったため、熱湯を注いで3分で食べられるというスタイルは、チキンラーメン発売地域外の若者にとっては物珍しかった。また、チキンラーメンを知る世代に対しても、どんぶりをカップに替え、具材も豊富な「完全調理済食品」であり、あくまでラーメンではなく「ヌードル」という新しい食品であるイメージを訴求した。



当初、問屋を通した正規ルートで希望小売価格100円での展開を目指していたが、当時約25〜35円だった袋入りインスタントラーメンの3〜4倍程度の価格設定であったため、関係者の反応は悪く、注文の入らない日々が続いた。最初の大口顧客となったのは「簡便性」と「完全調理済食品」という点に目をつけた自衛隊だった。



1971年11月21日には、東京・銀座の歩行者天国で大々的な宣伝販売を行い、4時間で2万食を販売した。1972年2月、あさま山荘事件が起きた際に、機動隊員達がカップヌードルを食べる場面が日本全国に生放送され、視聴者の注目を集めた。事件当時の現場は、摂氏マイナス15度前後の寒さで、警察官に配給された弁当も凍ってしまったため、熱湯を注ぐだけですぐに食べられるカップヌードルが非常食として導入されたという。



その後、カップヌードルは海を渡りアメリカでの展開を目指したが、文化の違いでスーパーで取り扱ってもらえない日々が続いた。取り扱ってもらえない理由は「ヌードル」だからだ。アメリカは麺を食べる文化はない。だから「ヌードル」と聞いただけで、スーパーなどのバイヤー(仕入れ担当者)は、売れないと思う。



そこで日清が考えた戦略は、ヌードルとして訴求しないことだった。

バイヤーとの商談で、「これは具材が多いスープです」と訴求すると、次々と取り扱うスーパーが増えたという。商品の中身は何ひとつとして変えていないのに、訴求するポイントを変えるだけで売れるから不思議だ。これがビジネスのおもしろさだ。



iPhoneの開発秘話もこれと似ている。

当時、Appleでは「iPod」が売れていた。これに携帯電話を組み合わせるアイデアを社内の小さなチームがジョブズに提案した。しかし、ジョブズは首を振らなかった。絶対に電話分野には参入シないと言う。そこでこのチームは、「iPodに携帯電話のアプリが入っている」という切り口でジョブズを説得したのだ。これも提案の切り口を変えただけで、商品の中身は変わっていない。これも、大変おもしろい事例だ。



さて先日、Twitterでスーパーの小田急ストアの入口に置いてあるカートについての投稿が話題を呼んだ。カートには、『石狩鍋が作れるカート こちらのカートには石狩鍋のレシピの具材が入っています。鮮魚コーナーで本日チラシ掲載の「広島産 加熱用かき100g当358円」と「秋鮭切身 3切入り598円」「お好きなお豆腐」、買い足し商品を入れて普段通りにレジまでお持ちください。』と、ポップが貼ってある。

あらかじめ具材がほとんど入っていて、「あとは○○を買うだけ」という新たな売り方だ。




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