起業や創業したての人や会社は「最初は信用も実績もないので、商品をできる限り安く提供して、まずは商品の良さをわかってもらう」と考えるようです。ですが、これが後々自分の首を締めることになります。ビジネスの難しいところです。そこで今日は、絶対にやってはいけない安売りについてわかりやすく解説します。
好き好んで安売りをする人はいません。できることならば定価で購入してほしいと願っています。これが本音です。ところが、自信のなさが安売りを助長してしまうのです。安売りは、誰でもができる一番簡単な販売促進策です。まだ会社員だった頃、上司に耳にタコができるほど言われました。
「いいか、割引や安売りは子どもでもできる。頭を使わないくてもいいからな!」と。本当にその通りだと、妙に納得したのを今でもよく憶えています。当時、量販店に勤めていたこともあり、値引きや割引が横行していました。この上司は有名百貨店から出向しているだけあって、簡単に割引や値引きを許しませんでした…。
一旦、割引や値引きをしてしまうと、顧客はその価格に慣れてしまいます。そして、定価では買わなくなります。閉店間近のスーパーでは、生鮮食品や惣菜の値引きが行われていますが、この値引き価格に慣れると定価で購入するのがバカバカしくなります。まさに、この心理です。
そのほか、当社の属するコンサルタト業界では、まずは無料セミナーに集客して、その後、無料個別相談をすすめ、最後にコンサルティング契約をするという流れが一般的です。私はこの営業プロセスには、真っ向から反対していました。理由は、無料セミナーや無料相談から、コンサル契約に至るのは稀だったからです。むしろ、コンサル契約をする起業は、無料セミナーにも参加しませんし、無料相談も利用しません。
ですから、私はこのやり方をまったく信じていませんでした。案の定、これの流れではコンサル契約に至らないという人が続発しました。
さて、ここでおもしろい実験を紹介します。行動経済学者ダン・アリエリー教授は学生を集めて、自分の社会保障番号の下二桁の数字00~99を用紙に記入してもらいました。その後、ボトルワインを提示して、0ドルから99ドルの価格の間で入札させました。
「一番高い金額をつけた人に、その価格で販売します」と、指示を出したところ、社会保障番号の下二桁の数字が大きい学生ほど、より高い価格を提示する傾向があったそうです。つまり、社会保障番号の下二桁の数字と、ワインの好みや評価はまったく関係ないのに、入札価格に大きな影響を及ぼしたことになります。
この心理を「恣意(しい)の一貫性」と呼びます。最初に提示した価格が、いい加減なものでも、それが私たちの意識に定着してしまうと、将来の価格まで決定してしまうのです。
ですから、無料セミナーや無料相談はもちろんのこと、お試しセットでも気に入れば定価で購入するという発想は甘いということなのです。割引率や値引額が大きく程、定価では購入しなくなります。ここを履き違えてはいけません。
安く買ったという経験をしてしまうと、次も安く買いたくなるのが人間です。これを覆すのは、一度使ったら手放せなくなる商品か、唯一無比の商品である場合だけです。それ以外は、安い方が選ばれる商品ばかりです。
ですから、定価で販売できる商品力とリピート促進させる営業力が必要です。売り手にとっても、買い手にとっても、安売りは麻薬のようなものです。一度やり始めると、やめられなくなります…。気をつけてください。
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