私は26歳の時、ある企業に就職した。
マーケティングの部署だ。1ヶ月も勤めると仕事柄、様々な部署に顔を出すようなった。まだ社会の洗礼を受けていなかった私は、ショッキングなことを言われた。今でもよく憶えている。その一言とは、「そんなに一生懸命にやるなよ。手を抜け!」。そこで今日は、手抜きについてわかりやすく解説する。
先輩社員からこんなことを言われるとは思ってもみなかった私は、どう対応していいのか迷った。そもそも手を抜くなんてことを考えたことがなかったので、そういう人がいることが信じられなかった。今から考えると、365日24時間、真剣勝負では体ばかりか精神ももたなかっただろう。しかし当時の私には、それが善であり、手を抜くなんてのは悪以外の何者でもなかった。
最近、昭和のコメディアン植木等の名言を知り、妙に納得した。
「いい加減に歌うことの難しさってのを、僕は初めて知った」という言葉だ。植木さんは、コメディアンだから、真面目に正統派に歌ったのではまったくおもしろくない。そこで、いい加減に歌うわけだが、真面目に歌うよりずっと難しいのだと思う。これは、想像しただけでも理解できる。
これから紹介するのは、似て非なる私の体験だが、「いい加減」や「手抜き」がいかに難しいのかを実感した。
随分前のことになるが、ある企業から問い合わせがあった。
営業ツールの作成についての問い合わせだったが「最近、業務内容が変わって、営業ツールを作り直さなければいけない。簡単に作ってもらえばいいから」という話だった。私は、簡単に作ってもらえばいいからという意味を理解できず「どういうことでしょうか?」と質問した。するとこのような返答が。
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時間をかけなくてもいいから、パッと見てわかるようにしてくれればいいから。
デザインに凝ったり、余計な事はしなくていい。
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このような依頼があったのは初めてだったので、最初は意味がよくわからなかったが、時間をかけず、簡単に、手を抜いて作ってくれということだったのだ。とりあえず、営業ツールがあればいいからという発想だ。そうすれば、費用は安くなるだろうということだったのだ…。
もし、このような依頼があったら、あなたならどうするだろうか?
私はこう言った。
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残念ながら、労力も時間もかけずに、適当に作るようなことは私どもはしておりません。
そうやってできたものに効果があるとは思えません。
顧客に伝えなくてはいけないことは必ず掲載しますし、よりわかりやすいように、
より伝わるように工夫します。
そして、一番大きな問題は、労力も時間もかけずに、手を抜いて、適当に作るのが
一番時間がかかるということです。
そもそも、そういうスタンスで仕事を行ったことがないので、
残念ながらお引き受けできません。
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困ったことに、こう伝えたら受注してしまった。
世の中は不思議だ。常日頃、手を抜いたり、いい加減なスタンスで仕事をしたことがないので、弊社にはできない依頼だ。逆に、この企業に聞きたいことあった。
「もし顧客から、適当にやって手を抜いても構わないから安くしてほしいと言われたら、仕事を引き受けるのでしょうか?」と。いい加減にやったり、手を抜いたりするのは意外と難しい。誠心誠意やる方がずっと簡単なのだ。そもそも手の抜き方がわからない。
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