経営をやっていて一番難しい意思決定は「撤退」です。 新規事業を始めて、計画通り順調に行く場合はほとんどありません…。大抵は、目標計画を下回る業績です。このような場合、ズルズルと赤字を引きずるケースが多々あります。そこで今日は、「撤退」についてわかりやすく解説します。
有名な話に、「コンコルドの悲劇」があります。
コンコルドは英仏のエアラインが共同で開発した音速の2倍近い最高速を誇る旅客機です。1969年に初飛行し、1976年から2003年まで定期運行されていました。離着陸時のパイロットの視界確保と最高の空力特性を両立させるために、機首が可動式のドループノーズになっていることも含め、多くのデザイン上の特徴も併せもつ、感嘆に価する美しい機体と言われていました。
ただし、開発途中から様々な問題が発見され、順調に運行が開始されたとしても開発コストを回収できないことが判明しました。ですが、あまりにも巨額の開発費を投じていたために、引くに引けない状態となり、致し方なく初飛行に辿り着いたのは有名な話です。
回収できるできないとは無関係に、すでに投下した資金や労力などを「サンクコスト」と言います。サンクコストがあまりにも巨額である場合は、回収できる見込みがなくても「もはや後戻りできないという恐怖感と、楽観的で根拠のない未来予測」を拠り所に、中止・撤退を考えずに計画を推進してしまい、結果として巨額の負債だけが残ることがあります。
このように、経営において撤退は非常に重要な意思決定です。
私のコンサルティング経験のなかで、新規事業から撤退するしないの意思決定コンサルティングをおこなったことが3~4社あります。非常に珍しいコンサルティング依頼なのですが、ただ単に、撤退するしないを決めればいいということではありません。
重要なのは撤退しないのであれば、どうしたら事業を軌道に乗せることができるのかを考えなくてはいけません。
まずは、今までおこなってきた数々の活動に問題があるのかないのかを検証をします。
問題がある場合は、やり方が間違っているということなので、新たなやり方を考えます。また、やり方は正しいのに活動量が不足しているとか、最後までやりきっていないなど、中途半端に取り組んでいる場合もあります。このような場合は、しっかりと取り組むための方法を考えます。
一方、撤退する場合は、撤退のやり方が問題となります。
その事業をすべてやめてしまうのか、それとも期限を決めて徐々に縮小していくのかによって、撤退のやり方が異なります。また、この事業の既存顧客に対して、新しい商品やサービスが提案できるのかできないのかも検討しなくてはいけません。
そういった意味では、事業に失敗しても、ただでは転ばないというのがポイントです。
このように、撤退にも様々なケースがあります。
撤退の意思決定に悩まないための唯一の方法は、撤退する場合の「基準」や「条件」を決めておくことです。新規で事業を始める場合は、さして難しくはありません。たとえば、「3年間で黒字化できなかったら撤退する」「累積赤字が○○○万円になったら撤退する」など、いくつかの撤退基準を設けておくのが良いでしょう。
撤退基準さえ明確であれば、迷うことはありません。
あとは経営者の意思です。
失敗したくないという気持ちが強いと、ズルズルと事業を継続してしまいますし、傷の浅いうちに撤退しておけば再生できると考えればスパッと撤退できます。経営者の意思決定は、新しいことを始めるときではなく、撤退のときにこそ重要だということを肝に銘じてください。
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